あおむろひろゆきのてくてく子育て日記〈第14話〉「かみを切る」
広げた新聞紙の上でうずくまる子ども、その手に握られていたのは……!?
「何やってるの!」
私が大きな声を上げた瞬間、子どもがビクッと跳ね上がるように起き上がります。そしてしばらく無言で見つめあった後、子どもが消え入りそうなほど小さな声で「じぶんできったよ……」と言いました。どういう事?と思いながらポカンとしていると、もう一度小さな声で「おねえちゃんだから、じぶんで、かみきったよ」と言いながらエーンと泣き始めて、この瞬間ようやく事態を理解します。まさかの『紙』じゃなくて『髪』だったというオチ。
その前の日、妻が新聞紙の上に子どもを座らせて、彼女のお気に入りのキティちゃんのハサミで前髪を切りました。どうしてもうまく切れなくてガタガタになった前髪を見て、3人でクスクス笑いあったことを覚えていたのでしょう。そして何でも自分でやりたがるお年頃、自分で髪を切れることを見せて褒めてもらいたかったのかもしれません。大きな声で叱ってしまったことを反省し、それと同時に、私が幼い頃親に初めておこづかいをもらった時の事を思い出しました。もらったばかりの10円玉を握りしめてすぐに近所の駄菓子屋に行って、ガムを買ったんです。自分で買い物ができたことを褒めてもらいたくて、走って家に帰ってガムを見せたら「すぐに使うんじゃなくて、もっとお金を大切にしなさい」と叱られて泣いたっけなあ。
「そっか、自分で髪を切れたのすごいね」そう言うと、「うん」とにっこり。「でもね、とっても危ないから、今度からはおかあちゃんに切ってもらおうね」小さな体を抱きしめてそういうと、ウンと頷いて私のシャツをギュウっと握りしめてきます。
よく見ると、でたらめに切ったせいで髪型がムッシュかまやつみたいになっていて、二人で鏡を見て大笑いしました。
この連載は隔週金曜日の更新です。第15話は、2週間後の9月16日(金)に更新予定です。次回もお楽しみに!
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