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道徳では必ずとりあげられるリンカーン大統領は極悪人!?
◆日本人はアメリカ大統領を勘違いしている①

倉山満によるアメリカ大統領採点シリーズ第1回

トランプ VS クリントン、第一回の公開討論会が終了。投票日である11月8日も目前のアメリカ大統領選挙。依然、ネガティブなイメージで報道され続けるトランプ候補。かたや健康問題が危惧されるがハト派なイメージで紹介されるクリントン候補。果たしてどちらが、アメリカにとって、そして日本にとって、どちら国益になるのでしょうか? そもそも日本人はアメリカ大統領の実像を知っているのでしょうか? 
主要なアメリカ大統領を採点しながら、日米史を振り返る、絶賛発売中の『大間違いのアメリカ合衆国』。中でも日本人が思い描いているイメージとかけ離れたアメリカ大統領を厳選。倉山先生採点のアメリカ大統領ご紹介します。

奴隷を解放した英雄として紹介されるリンカーンは極悪人!
第16 代 エイブラハム・リンカーン

第16代 エイブラハム・リンカーン
①国益への貢献   5点☆☆☆☆☆
②世界秩序への貢献 1点    ☆
​③正気を保ったか  3点☆☆☆

 「アメリカの始皇帝」ことリンカーン。

 ワシントンやジェファーソンが堯・舜・禹なら、リンカーンは始皇帝としか言いようがありません。実際にはワシントン時代のアメリカ合衆国は今のEUみたいなもので、リンカーンによって、事実上建国された様なものだからです。

 また、日本人にとって、一般にリンカーンとは道徳の教科書に出てくる人ですが、実際は極悪人の大噓つきでした。

 南北戦争とは、奴隷解放のためなどではなく、単に北部(リンカーン)が南部の「連邦離脱権」をなかったことにするための戦いでした。彼は白人と有色人種が平等であるなどと微塵も思っておりません。興味のある方は拙著『噓だらけの日米近現代史』(扶桑社)で書きましたので、ご一読を。

 ただ、事実上のアメリカ建国の祖ですから、国益への貢献は五点。
   南北戦争が嚆矢(こうし)となり世界の戦争は総力戦になっていたので、はた迷惑この上ありませんから世界秩序への貢献は一点。

 正気に関しては、彼の奴隷政策への偽善というのもおこがましい極悪非道の態度は否定したいですが、それでも連邦統一のためには政治家として振る舞ったことを考えると差し引きして三点とします。

 なお、日本との関係で言うと、必ず「南北戦争でアメリカは日本に関われなくなった。戦争終了後、余った武器が大量に日本に流れ込み、幕末動乱で使用された」と語られます。

 後者はともかく、前者は眉唾(まゆつば)です。

 当時の日本にとって最大の脅威はロシアで、英仏(の出先の外交官たち)が食指を伸ばしています。

 ロシアは隣国の大国なので組むと飲み込まれるとの判断で、日本人は誰も組
みません。幕府はフランス、討幕派はイギリスと接近するのですが、アメリカなど南北戦争があろうがなかろうが、英仏露の誰にも対抗できません。 

   そんな力などありはしないのです。だからこそ、幕府は和親条約も修好通商条約も最初にアメリカと結んだのです。
   
   リンカーンの時代のアメリカは、ようやく産声をあげた新興国なのです。

<採点方法>
① アメリカの国益にどれほど貢献したか
② 世界の秩序にどれほど貢献したか
③ いつまで正気を保ったか
①と②は他の国の指導者にも適用可能な普遍的なものです。
そこへもうひとつ③の基準がどうしても必要なのがアメリカならではです。
①はアメリカ人から見たときの基準、②はアメリカ以外から見た客観的な基準、③は自然科学的基準です。各項目五点満点の五段階評価です。

大間違いのアメリカ合衆国』より抜粋 
明日は、人類に不幸を撒き散らした、最悪の大統領ウッドロー・ウイルソンです。

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